Blog 2019.6.18 今までの給食 これからの給食—社長の中川とリラックスデザイン部の清水が登壇しました

神保町ブックセンターで「給食の歴史」刊行イベントが開催され、UDSの中川とリラックスデザイン部の清水麻美が著者の藤原辰史さんとともに登壇しました。

イベント開催のきっかけは、今年4月に開校した大日向小学校の企画から。オランダのイエナプラン教育を実践する大日向小学校は、UDSが企画・リノベーション設計、そして子どもたちの給食でありまちの人にも開かれた食堂「大日向食堂」の運営を手掛けています。大日向食堂の企画の段階で、参考文献として中川が手にとったのが「給食の歴史」(出版:岩波書店)です。

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日本人のほぼ全員が経験している「給食」ですが、この書籍に書かれていることは一般的に知られていないことも多く衝撃を受けたそう。今回のイベントは、著者の藤原辰史さん(京都大学准教授)をお迎えし「給食の歴史」を学ぶと共に、これからの給食の取組みとして大日向食堂での実践事例もご紹介させていただきました。

これまでの給食、歴史の面から解説を

まずは著者の藤原辰史さんから書籍で最も伝えたかったというポイントをご紹介。

(左) 藤原さん (右) UDS中川
(左)藤原さん (右)UDS中川

身近なものでありながらも、一般にはあまり知られていない歴史の部分を解説していきます。

1.貧困
給食の歴史は、山形のお坊さんが貧困から子供を救うセーフティーネットとして始めたとも言われています。現代の日本でも6人に1人は貧困と言われていて、改めて給食の役割は大きくなってきている。

2. GHQ
戦後のアメリカの政治家は、給食を与えて食料を行き渡らせ子供を飢えさせないことで、統治する正当性を持たせるようにしたという歴史があります。

3.災害
給食があることで、避難場所となる学校の調理場で炊き出しができることから、関東大震災以来いく度となく復興の拠点となってきた。

給食がもしなかったら、戦後の日本は恐ろしいことになっていたかもしれません。給食は静かに戦後の子どもに差し伸べられた手のようなものなのです。

これからの給食、大日向食堂の取り組み

続いてリラックス食堂の管理栄養士、清水から大日向小学校での給食「大日向食堂」での取組をご紹介します。大日向食堂は給食を「まちのみんなとつくる"学校ごはん"」と位置付け、ユニークな特徴を持って運営しています。皆さんが経験してきた、いわゆる「給食」とはだいぶ様子が異なるのではないでしょうか?

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・好きなタイミングで、いろんな友達と一緒に
他の人に合わせることなく、自分のタイミングで食事をスタート
・配膳は子供達で、半ビュッフェスタイル
自ら手をあげた子どもが、自分たちで配膳を
・家庭で使うような、陶器などの食器を使います
きちんと扱わないと割れてしまう、ということも学びます。
・地域とつながりを作る、地域とともに食堂を作る
地元の業者さんに限定し、食材を仕入れ
・外部利用できる学校ごはん
地域の方や親御さんたちも利用ができます。毎日10〜20人ほどが訪れ一緒にごはんを食べます。
・味の感想を直接子供たちから聞きます
スタッフも一緒に並んでごはんを食べて、直接感想を聞きます。あだ名で呼ばれるスタッフも!

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大日向食堂のコンセプト
大日向食堂のコンセプト

この大日向食堂での取り組みを聞き、藤原さんから「歴史的にも紐解けますね!」と解説いただきました。

1. コミュニティー
1950年に文部省が発行した学校給食読本に、給食の理想形として掲載されていたのは「コミュニティースクールランチ」という言葉。それは地元の生産者に作ってもらい、近所の人にもつくることを手伝ってもらう、というもの。大日向小学校では、さらに「一緒に食べる」ということが加わっていて面白い!

家族という制度が疲弊している現代、家族以外の人と食べられる場所、そしてふらりとまちの人が入れる場所が増えると良いですね。

2. 食べる時間
現代の学校は、詰め込み教育のため、短い時間で急いで食べさせていたり、会話をせずに集中して食べる「黙食」が流行っているが食べる時間を1時間もとっているのはすばらしい!

3. 割れる食器を使っているということ
東日本大震災を機に、陶器や金継ぎが流行し人が人を慈しむ、ものも慈しむ、ということが増えた。陶器のあたたかみを大切にしそれが壊れるものであるということを理解することはとても良い教育につながると思います。

4.言葉と食
日本一給食が美味しいと言われている京都府の伊根では、全生徒が列を作って、味の感想を調理師に伝えるということが行われています。大日向食堂で、調理師も一緒に食べて味を直接伝えているのは素晴らしい!食べ物の美味しさや味を自分の言葉で伝える訓練はとても国語力の勉強になる。大日向食堂で何が語られているのか、どのように言葉と食を繋いでいるのか、とても注目したいです。

地域と共に、まちづくりができる栄養士へ

最後に会場から質問を受けました。以前一般の小学校の給食で勤務し、UDSヘキャリアチェンジをした清水には次のような質問をいただきました。

会場からの質問に答える清水
会場からの質問に答える清水

Q. 清水さんは、以前のキャリアから食育の概念や取組み方が何か変わりましたか?

清水:「一般の学校で働いていた以前は、作られたレシピがありそれを作るだけが仕事だったんです。大日向食堂のように、自分たちが企画して作れるのは自身にとっても大きなチャンス。子供の食は親の影響が大きく12歳まではいろんな味を感じて、育てていく時期です。大日向食堂では関心が高い親御さんが多く、今後は、子供・親・地域の人へ向けて一緒に食を学ぶ機会のイベントを企画しています。」管理栄養士としてのキャリアと、まちづくりの一環となる食堂の可能性を語ります。

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著者の藤原先生はもちろん参加者のみなさまにも多くのヒントをいただき、今後の大日向食堂の運営につながる貴重な機会となりました。ありがとうございました!